■ 人が人を評価するのではなく、自己申告制の評価制度を作りたい
私は常々、「人が人を評価していいのか?」と疑問を持っていました。
上司が部下を評価する場合に、基準がなければその上司の価値観での評価となり、違う上司だったら異なる評価になるかもしれません。板金修理業では現場作業が中心となるため、事務職・営業職は現場作業員と評価ポイントが異なります。テレワークになれば、 上司も仕事ぶりを常に見ていられないため、正しい評価はさらに難しいものになります。
だからこそ、評価は「自己申告制」にしたいと思いました。
しかし「自己申告」は、自分で過大評価や過小評価するリスクもあります。適正な基準を設けた「納得感」のある評価制度を構築したいと考えて活用したのが、今回のコンサルティングでした。
どのような形で落とし込めば納得感のある評価制度になるか、課題解決コンサルティングを活用し、専門家の視点を入れて密な議論を続けました。その結果、従業員が自分自身の行動を、「態度評価」「能力評価」「成績評価」のカテゴリ別に記載して提出する「グッドアクションシート」という評価シートを作成しました。これを従業員が週に1回上司に提出し意見交換します。そうすることで、従業員にも評価者にも日々の行動の変化が可視化され、テレワークにおいても納得感のある評価ができるようになりました。
■ テレワークの導入で、マルチプレーヤーが増え、成長につながる
当社がテレワークを意識しはじめたのは、コロナ禍の感染症対策としてでした。
すぐにテレワークを導入し、事務職・営業職のほか社長を含めたテレワーク可能なスタッフに対して、出社・帰社しなくても仕事が円滑に回るように環境を整えました。
しかし、会社の中心は車の修理作業です。車の修理は、現場でしか対応できません。現場担当者からは、テレワーク対応への不公平感の空気もありました。しかし世の中の流れはテレワークへシフトしていたため、現場もテレワーク中の社長や担当者との連絡を迫られます。今まですぐ近くで声をかければ相談できた社長は、テレワークです。メールを送っても、社長には大量のメールが届いているため、いつ返事がもらえるか分かりません。
そこでリアルタイムで対話できるチャットツールを活用しましたが、チャットでは手短に用件だけを伝える必要があります。また、相談相手に判断を求める際に、どのような材料が必要かを事前に考えて相談しなければなりません。すぐ近くで、ちょっと「車見て」というやり取りはできないのです。
その結果、社内ではマルチタスクができる従業員が増えました。
テレワーク以前は、何でも近くにいる上司や先輩に聞くことができましたが、それができなくなったことで「自分で考える」必要がでてきます。この「自分で考える」ことができるようになると、仕事や相談は的確でスピーディーになります。
実際にテレワークと評価制度を導入することで、仕事に対して責任感を持ち、自立できる従業員が増えました。「テレワークと評価制度は従業員の成長に寄与した」と感じています。
■ コンサルタントとの相性も大事
これまでのコンサルタントとのやり取りを振り返り、コンサルタントとの相性は大事だと思いました。
私には、「人が人を評価するのではなく、自己申告型の評価制度を作りたい」という強い想いがあったから、常日頃から考えていることをコンサルタントにぶつけていきました。的外れな話もしたかもしれませんが、それをまず受け止めてくれるコンサルタントだったから安心して取り組めました。もしこれが、最初から「評価制度は、こう考えるべき」という正解を出してくるタイプのコンサルタントだったら、こんなにいい議論ができなかったかもしれません。
■ 事務局より
当事務局では、相談をいただいた方との人間的な相性も踏まえてコンサルタントを決定しています。本事例は、田澤社長の強い想いと、コンサルタントの専門的知見により密な議論ができたからこそ、納得感のある制度構築ができました。
今回の事例のように、テレワークを単なるツールと考えず、従業員の成長に役立てる企業が増えることを願っています。